中原中也・雨の詩の名作11/梅雨と弟
梅雨と弟
毎日々々雨が降ります
去年の今頃梅の実を持って遊んだ弟は
去年の秋に亡くなって
今年の梅雨(つゆ)にはいませんのです
お母さまが おっしゃいました
また今年も梅酒をこさおうね
そしたらまた来年の夏も飲物(のみもの)があるからね
あたしはお答えしませんでした
弟のことを思い出していましたので
去年梅酒をこしらう時には
あたしがお手伝いしていますと
弟が来て梅を放(ほ)ったり随分(ずいぶん)と邪魔をしました
あたしはにらんでやりましたが
あんなことをしなければよかったと
今ではそれを悔んでおります……
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
« 中原中也・雨の詩の名作10/雨の朝 | トップページ | 中原中也・雨の詩の名作12/春の雨 »
「065中原中也・雨の詩の名作コレクション」カテゴリの記事
- 中原中也・朝の詩の名作29/春の消息(2020.01.01)
- 中原中也・朝の詩の名作24/怠 惰(2019.12.27)
- 中原中也・雨の詩の名作14/一夜分の歴史(2019.12.01)
- 中原中也・雨の詩の名作13/間奏曲(2019.11.30)
- 中原中也・雨の詩の名作12/春の雨(2019.11.29)


コメント