中原中也・雨の詩の名作コレクション/(南無 ダダ)
(南無 ダダ)
南無 ダダ
足駄(あしだ)なく、傘なく
青春は、降り込められて、
水溜(たま)り、泡(あぶく)は
のがれ、のがれゆく。
人よ、人生は、騒然たる沛雨(はいう)に似ている
線香を、焚(た)いて
部屋にはいるべきこと。
色町(いろまち)の女は愛嬌(あいきょう)、
この雨の、中でも挨拶をしている
青い傘
植木鉢も流れ、
水盤も浮み、
池の鯉はみな、逃げてゆく
永遠に、雨の中、町外れ、出前持ちは猪突(ちょとつ)し、
私は、足駄なく傘なく、
茲(ここ)、部屋の中に香を焚いて、
チュウインガムも噛みたくはない。
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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