中原中也/秋の詩名作コレクション46/秋の日
秋の日
磧(かわら)づたいの 竝樹(なみき)の 蔭(かげ)に
秋は 美し 女の 瞼(まぶた)
泣きも いでなん 空の 潤(うる)み
昔の 馬の 蹄(ひづめ)の 音よ
長(なが)の 年月 疲れの ために
国道 いゆけば 秋は 身に沁(し)む
なんでも ないてば なんでも ないに
木履(きぐつ)の 音さえ 身に 沁みる
陽(ひ)は今 磧の 半分に 射し
流れを 無形(むぎょう)の 筏(いかだ)は とおる
野原は 向(むこ)うで 伏(ふ)せって いるが
連れだつ 友の お道化(どけ)た 調子も
不思議に 空気に 溶け 込んで
秋は 案じる くちびる 結んで
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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