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2019年11月12日 (火)

中原中也/秋の詩名作コレクション56/暗い天候(二・三)

暗い天候(二・三)

こんなにフケが落ちる、
   秋の夜に、雨の音は
トタン屋根の上でしている……
   お道化(どけ)ているな――
しかしあんまり哀しすぎる。

犬が吠える、虫が鳴く、
   畜生(ちくしょう)! おまえ達には社交界も世間も、
ないだろ。着物一枚持たずに、
   俺も生きてみたいんだよ。

吠えるなら吠えろ、
   鳴くなら鳴け、
目に涙を湛(たた)えて俺は仰臥(ぎょうが)さ。
   さて、俺は何時(いつ)死ぬるのか、明日(あした)か明後日(あさって)か……
――やい、豚、寝ろ!

こんなにフケが落ちる、
   秋の夜に、雨の音は
トタン屋根の上でしている。
   なんだかお道化ているな
しかしあんまり哀しすぎる。

この穢(けが)れた涙に汚れて、
今日も一日、過ごしたんだ。

暗い冬の日が梁(はり)や壁を搾(し)めつけるように、
私も搾められているんだ。

赤ン坊の泣声や、おひきずりの靴の音や、
昆布や烏賊(するめ)や洟紙(はながみ)や首巻や、

みんなみんな、街道沿(かいどうぞ)いの電線の方へ
荷馬車の音も耳に入らずに、舞い颺(あが)り舞い颺り

吁(ああ)! はたして昨日が晴日(おてんき)であったかどうかも、
私は思い出せないのであった。

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)

 

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