中原中也・雨の詩の名作コレクション7/雨の日
雨の日
通りに雨は降りしきり、
家々の腰板古(こしいたふる)い。
もろもろの愚弄(ぐろう)の眼(まなこ)は淑(しと)やかとなり、
わたくしは、花弁(かべん)の夢をみながら目を覚ます。
*
鳶色(とびいろ)の古刀(ことう)の鞘(さや)よ、
舌あまりの幼な友達、
おまえの額(ひたい)は四角張ってた。
わたしはおまえを思い出す。
*
鑢(やすり)の音よ、だみ声よ、
老い疲れたる胃袋よ、
雨の中にはとおく聞け、
やさしいやさしい唇を。
*
煉瓦(れんが)の色の憔心(しょうしん)の
見え匿(かく)れする雨の空。
賢(さかし)い少女の黒髪と、
慈父(じふ)の首(こうべ)と懐かしい……
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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