中原中也・朝の詩の名作4/帰 郷
帰 郷
柱も庭も乾いている
今日は好(よ)い天気だ
椽(えん)の下では蜘蛛の巣が
心細そうに揺れている
山では枯木も息を吐(つ)く
ああ今日は好い天気だ
路傍(みちばた)の草影が
あどけない愁(かなし)みをする
これが私の故里(ふるさと)だ
さやかに風も吹いている
心置(こころおき)なく泣かれよと
年増婦(としま)の低い声もする
ああ おまえはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云(い)う
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
« 中原中也・朝の詩の名作3/秋の一日 | トップページ | 中原中也・朝の詩の名作5/悲しき朝 »
「066中原中也・朝の詩の名作コレクション」カテゴリの記事
- 中原中也・朝の詩の名作30/春と恋人(2020.01.02)
- 中原中也・朝の詩の名作28/朝(雀の声が鳴きました)(2019.12.31)
- 中原中也・朝の詩の名作27/夜明け(2019.12.30)
- 中原中也・朝の詩の名作26/朝(雀が鳴いている)(2019.12.29)
- 中原中也・朝の詩の名作25/朝(2019.12.28)
コメント