中原中也・朝の詩の名作28/朝(雀の声が鳴きました)
朝
雀の声が鳴きました
雨のあがった朝でした
お葱(ねぎ)が欲しいと思いました
ポンプの音がしていました
頭はからっぽでありました
何を悲しむのやら分りませんが、
心が泣いておりました
遠い遠い物音を
多分は汽車の汽笛(きてき)の音に
頼みをかけるよな心持
心が泣いておりました
寒い空に、油煙(ゆえん)まじりの
煙が吹かれているように
焼木杭(やけぼっくい)や霜(しも)のよう僕の心は泣いていた
(一九三四・四・二二)
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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