中原中也・朝の詩の名作24/怠 惰
怠 惰
夏の朝よ、蝉(せみ)よ、
砂に照りつける陽よ……
燃えている空よ!
砂に照りつける陽よ……
燃えている空よ!
今日は誰も泳いでいない、
赤痢患者でもあったんだろう?
海は空しく光っている。――風よ……
赤痢患者でもあったんだろう?
海は空しく光っている。――風よ……
叔父さんは僕にいうのだ
「早く持ったほうがいいぜ、
独り者が碌(ろく)なことを考えはせぬ。」
「早く持ったほうがいいぜ、
独り者が碌(ろく)なことを考えはせぬ。」
それどころか、……夏の朝よ、蝉よ、
むこうにみえる、海よ、
むこうにみえる、海よ、
僕は寝ころびたいのだよ、
目をつむって蝉が聞いていたい!――森の方……
(一九三三・八・一〇)
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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