中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション18/蜻蛉に寄す
蜻蛉に寄す
あんまり晴れてる 秋の空
赤い蜻蛉(とんぼ)が 飛んでいる
淡(あわ)い夕陽を 浴びながら
僕は野原に 立っている
遠くに工場の 煙突(えんとつ)が
夕陽にかすんで みえている
大きな溜息(ためいき) 一つついて
僕は蹲(しゃが)んで 石を拾う
その石くれの 冷たさが
漸(ようや)く手中(しゅちゅう)で ぬくもると
僕は放(ほか)して 今度は草を
夕陽を浴びてる 草を抜く
抜かれた草は 土の上で
ほのかほのかに 萎(な)えてゆく
遠くに工場の 煙突は
夕陽に霞(かす)んで みえている
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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