中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション12/含 羞(はじらい)
含 羞(はじらい)
――在りし日の歌――
なにゆえに こころかくは羞(は)じらう
秋 風白き日の山かげなりき
椎(しい)の枯葉の落窪(おちくぼ)に
幹々(みきみき)は いやにおとなび彳(た)ちいたり
枝々の 拱(く)みあわすあたりかなしげの
空は死児等(しじら)の亡霊にみち まばたきぬ
おりしもかなた野のうえは
“あすとらかん”のあわい縫(ぬ)う 古代の象の夢なりき
椎の枯葉の落窪に
幹々は いやにおとなび彳ちいたり
その日 その幹の隙(ひま) 睦(むつ)みし瞳
姉らしき色 きみはありにし
その日 その幹の隙 睦みし瞳
姉らしき色 きみはありにし
ああ! 過ぎし日の 仄(ほの)燃えあざやぐおりおりは
わが心 なにゆえに なにゆえにかくは羞じらう……
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。※原文の「あすとらかん」の傍点は” “で示しました。)
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