中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション3/凄じき黄昏
凄じき黄昏
捲(ま)き起る、風も物憂(ものう)き頃(ころ)ながら、
草は靡(なび)きぬ、我はみぬ、
遐(とお)き昔の隼人等(はやとら)を。
銀紙色の竹槍(たけやり)の、
汀(みぎわ)に沿(そ)いて、つづきけり。
――雑魚(ざこ)の心を俟(たの)みつつ。
吹く風誘わず、地の上の
敷(し)きある屍(かばね)――
空、演壇に立ちあがる。
家々は、賢き陪臣(ばいしん)、
ニコチンに、汚れたる歯を押匿(おしかく)す。
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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