中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション5/春の思い出
春の思い出
摘み溜(た)めしれんげの華(はな)を
夕餉(ゆうげ)に帰る時刻となれば
立迷う春の暮靄(ぼあい)の
土の上(へ)に叩きつけ
いまひとたびは未練で眺め
さりげなく手を拍(たた)きつつ
路の上(へ)を走りてくれば
(暮れのこる空よ!)
わが家(や)へと入りてみれば
なごやかにうちまじりつつ
秋の日の夕陽の丘か炊煙(すいえん)か
われを暈(くる)めかすもののあり
古き代(よ)の富みし館(やかた)の
カドリール ゆらゆるスカーツ
カドリール ゆらゆるスカーツ
何時(いつ)の日か絶(た)えんとはする カドリール!
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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