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2020年1月 3日 (金)

中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション1/春の日の夕暮

春の日の夕暮 

 

トタンがセンベイ食べて

春の日の夕暮は穏かです

アンダースローされた灰が蒼ざめて

春の日の夕暮は静かです

 

吁(ああ)! 案山子(かかし)はないか――あるまい

馬嘶(いなな)くか――嘶きもしまい

ただただ月の光のヌメランとするままに

従順なのは 春の日の夕暮か

 

ポトホトと野の中に伽藍(がらん)は紅(あか)く

荷馬車の車輪 油を失い

私が歴史的現在に物を云(い)えば

嘲(あざけ)る嘲る 空と山とが

 

瓦が一枚 はぐれました

これから春の日の夕暮は

無言(むごん)ながら 前進します

自(みずか)らの 静脈管の中へです

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)

 

 

 

 

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