中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション22/冬の長門峡
冬の長門峡
長門峡(ちょうもんきょう)に、水は流れてありにけり。
寒い寒い日なりき。
われは料亭にありぬ。
酒酌(く)みてありぬ。
われのほか別に、
客とてもなかりけり。
水は、恰(あたか)も魂あるものの如(ごと)く、
流れ流れてありにけり。
やがても密柑(みかん)の如き夕陽、
欄干(らんかん)にこぼれたり。
ああ! ――そのような時もありき、
寒い寒い 日なりき。
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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