中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション24/倦 怠
倦 怠
へとへとの、わたしの肉体(からだ)よ、
まだ、それでも希望があるというのか?
(洗いざらした石の上(へ)に、
今日も日が照る、午後の日射しよ!)
市民館の狭い空地(あきち)で、
子供は遊ぶ、フットボールよ。
子供のジャケツはひどく安物、
それに夕陽はあたるのだ。
へとへとの、わたしの肉体(からだ)よ、
まだ、それでも希望があるというのか?
(オヤ、お隣りでは、ソプラノの稽古(けいこ)、
たまらなく、可笑(おか)しくなるがいいものか?)
オルガンよ! 混凝土(コンクリート)の上なる砂粒(さりゅう)よ!
放課後の小学校よ! 下駄箱よ!
おお君等(きみら)聖なるものの上に、
――僕は夕陽を拝みましたよ!
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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