中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション17/独身者
独身者
石鹸箱(せっけんばこ)には秋風が吹き
郊外と、市街を限る路(みち)の上には
大原女(おはらめ)が一人歩いていた
――彼は独身者(どくしんもの)であった
彼は極度の近眼であった
彼はよそゆきを普段に着ていた
判屋奉公(はんやぼうこう)したこともあった
今しも彼が湯屋(ゆや)から出て来る
薄日(うすび)の射してる午後の三時
石鹸箱には風が吹き
郊外と、市街を限る路の上には
大原女が一人歩いていた
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。※原文「よそゆき」の傍点は“ ”で示しました。)
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