カテゴリー

2024年1月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

« 中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション51/(秋が来た) | トップページ | 中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション53/(短歌五首) »

2020年2月23日 (日)

中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション52/夏の夜の博覧会はかなしからずや

夏の夜の博覧会はかなしからずや

 

夏の夜の、博覧会は、哀しからずや

雨ちょと降りて、やがてもあがりぬ

夏の夜の、博覧会は、哀しからずや

 

女房買物をなす間、かなしからずや

象の前に余と坊やとはいぬ

二人蹲(しゃが)んでいぬ、かなしからずや、やがて女房きぬ

 

三人博覧会を出でぬかなしからずや

不忍(しのばず)ノ池の前に立ちぬ、坊や眺めてありぬ

 

そは坊やの見し、水の中にて最も大なるものなりきかなしからずや、

髪毛風に吹かれつ

見てありぬ、見てありぬ、

それより手を引きて歩きて

広小路に出でぬ、かなしからずや

 

広小路にて玩具を買いぬ、兎の玩具かなしからずや

 

 

その日博覧会入りしばかりの刻(とき)は

なお明るく、昼の明(あかり)ありぬ、

 

われら三人(みたり)飛行機にのりぬ

例の廻旋する飛行機にのりぬ

 

飛行機の夕空にめぐれば、

四囲の燈光また夕空にめぐりぬ

 

夕空は、紺青(こんじょう)の色なりき

燈光は、貝釦(かいボタン)の色なりき

 

その時よ、坊や見てありぬ

その時よ、めぐる釦を

その時よ、坊やみてありぬ

その時よ、紺青の空!

 

(一九三六・一二・二四)

 

 (「新編中原中也全集」第2巻・詩より。新かなに変えてあります。)

« 中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション51/(秋が来た) | トップページ | 中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション53/(短歌五首) »

068中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション51/(秋が来た) | トップページ | 中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション53/(短歌五首) »