中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション32/幼き恋の回顧
幼き恋の回顧
幼き恋は
燐寸(マッチ)の軸木(じくぎ)
燃えてしまえば
あるまいものを
寐覚(ねざ)めの囁(ささや)きは
燃えた燐(りん)だった
また燃える時が
ありましょうか
アルコールのような夕暮に
二人は再びあいました――
圧搾酸素(あっさくさんそ)でもてている
恋とはどんなものですか
その実(じつ)今は平凡ですが
たったこないだ燃えた日の
印象が二人を一緒に引きずってます
何(なん)の方(ほう)へです――
ソーセージが
紫色に腐れました――
多分「話の種」の方へでしょう
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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