中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション49/(一本の藁は畦の枯草の間に挟って)
(一本の藁は畦の枯草の間に挟って)
一本の藁(わら)は畦(あぜ)の枯草の間に挟(ささ)って
ひねもす陽を浴びぬくもっていた
ひねもす空吹く風の余勢に
時偶(ときたま)首上げあたりを見ていた
私は刈田の堆藁(としゃく)に凭(もた)れて
ひねもす空に凧(たこ)を揚げてた
ひねもす糸を繰り乍(なが)ら
空吹く風の音を聞いてた
空は青く冷たく青く
玻璃(はり)にも似たる冬景であった
一本の煙草を点火するにも
沢山の良心を要することだった
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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