中原中也・夕(ゆうべ)の詩コレクション45/小 景
小 景
河の水は濁(にご)って
夕陽を映して錆色(さびいろ)をしている。
荷足(にたり)はしずしずとやって来る。
竿(さお)さしてやって来る。
その船頭(せんどう)の足の皮は、
乾いた舟板の上を往(い)ったり来たりする。
荷足はしずしずと下ってゆく。
竿さして下ってゆく。
船頭は時偶(ときたま)一寸(ちょっと)よそ見して、
竿さすことは忘れない。
船頭は竿さしてゆく。
船頭は、夕焼の空さして下る。
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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