中原中也・春の詩コレクション25/幼なかりし日
幼なかりし日
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在りし日よ、幼なかりし日よ!
春の日は、苜蓿(うまごやし)踏み
青空を、追いてゆきしにあらざるか?
いまははた、その日その草の、
何方(いずち)の里を急げるか、何方の里にそよげるか?
すずやかの、昔ならぬ音は呟(つぶや)き
電線は、心とともに空にゆきしにあらざるか?
町々は、あやに翳(かげ)りて、
厨房(ちゅうぼう)は、整いたりしにあらざるか?
過ぎし日は、あやにかしこく、
その心、疑惧(うたがい)のごとし。
さわれ人きょうもみるがごとくに、
子等の背はまろく
子等の足ははやし。
………人きょうも、きょうも見るごとくに。
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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