中原中也・春の詩コレクション33/狂気の手紙
狂気の手紙
袖の振合い他生(たしょう)の縁
僕事(ぼくごと)、気違いには御座候(ござそうら)えども
格別害も致し申さず候間
切角(せっかく)御一興とは思召(おぼしめ)され候て
何卒(なにとぞ)気の違った所なぞ
御高覧の程伏而懇願仕候(ふしてこんがんつかまつりそうろう)
陳述此度(のぶればこたび)は気がフーッと致し
キンポーゲとこそ相成候(あいなりそうろう)
野辺(のべ)の草穂と春の空
何仔細(しさい)あるわけにも無之(これなく)候処
タンポポや、煙の族(やから)とは相成候間
一筆御知らせ申上候
猶(なお)、また近日日蔭など見申し候節は
早速参上、羅宇(ラウ)換えや紙芝居のことなぞ
詳しく御話し申し上候
お葱(ねぎ)や塩のことにても相当お話し申上候
否、地球のことにてもメリーゴーランドのことにても
お鉢(はち)のことにても火箸(ひばし)のことにても何にても御話申上可候(おはなしもうしあぐべくそうろう)匆々(そうそう)
(一九三四・四・二二)
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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