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2020年3月30日 (月)

中原中也・春の詩コレクション33/狂気の手紙

狂気の手紙

 

袖の振合い他生(たしょう)の縁

僕事(ぼくごと)、気違いには御座候(ござそうら)えども

格別害も致し申さず候間

切角(せっかく)御一興とは思召(おぼしめ)され候て

何卒(なにとぞ)気の違った所なぞ

御高覧の程伏而懇願仕候(ふしてこんがんつかまつりそうろう)

 

陳述此度(のぶればこたび)は気がフーッと致し

キンポーゲとこそ相成候(あいなりそうろう)

野辺(のべ)の草穂と春の空

何仔細(しさい)あるわけにも無之(これなく)候処

タンポポや、煙の族(やから)とは相成候間

一筆御知らせ申上候

 

猶(なお)、また近日日蔭など見申し候節は

早速参上、羅宇(ラウ)換えや紙芝居のことなぞ

詳しく御話し申し上候

お葱(ねぎ)や塩のことにても相当お話し申上候

否、地球のことにてもメリーゴーランドのことにても

お鉢(はち)のことにても火箸(ひばし)のことにても何にても御話申上可候(おはなしもうしあぐべくそうろう)匆々(そうそう)

 

                   (一九三四・四・二二)

 

(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)

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