中原中也・春の詩コレクション5/早春の風
早春の風
きょう一日(ひとひ)また金の風
大きい風には銀の鈴
きょう一日また金の風
女王の冠さながらに
卓(たく)の前には腰を掛け
かびろき窓にむかいます
外(そと)吹く風は金の風
大きい風には銀の鈴
きょう一日また金の風
枯草(かれくさ)の音のかなしくて
煙は空に身をすさび
日影たのしく身を嫋(なよ)ぶ
鳶色(とびいろ)の土かおるれば
物干竿(ものほしざお)は空に往(ゆ)き
登る坂道なごめども
青き女(おみな)の顎(あぎと)かと
岡に梢(こずえ)のとげとげし
今日一日また金の風……
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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