中原中也・春の詩コレクション8/春と赤ン坊
春と赤ン坊
菜の花畑で眠っているのは……
菜の花畑で吹かれているのは……
赤ン坊ではないでしょうか?
いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です
ひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です
菜の花畑に眠っているのは、赤ン坊ですけど
走ってゆくのは、自転車々々々
向(むこ)うの道を、走ってゆくのは
薄桃色(うすももいろ)の、風を切って……
薄桃色の、風を切って
走ってゆくのは菜の花畑や空の白雲(しろくも)
――赤ン坊を畑に置いて
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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