中原中也・夜の詩コレクション24/夏の夜に覚めてみた夢
夏の夜に覚めてみた夢
眠ろうとして目をば閉じると
真ッ暗なグランドの上に
その日昼みた野球のナインの
ユニホームばかりほのかに白く――
ナインは各々(おのおの)守備位置にあり
狡(ずる)そうなピッチャは相も変らず
お調子者のセカンドは
相も変らぬお調子ぶりの
扨(さて)、待っているヒットは出なく
やれやれと思っていると
ナインも打者も悉(ことごと)く消え
人ッ子一人いはしないグランドは
忽(たちま)ち暑い真昼(ひる)のグランド
グランド繞(めぐ)るポプラ竝木(なみき)は
蒼々(あおあお)として葉をひるがえし
ひときわつづく蝉しぐれ
やれやれと思っているうち……眠(ね)た
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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