中原中也・夜の詩コレクション6/秋の夜空
秋の夜空
これはまあ、おにぎわしい、
みんなてんでなことをいう
それでもつれぬみやびさよ
いずれ揃(そろ)って夫人たち。
下界(げかい)は秋の夜(よ)というに
上天界(じょうてんかい)のにぎわしさ。
すべすべしている床の上、
金のカンテラ点(つ)いている。
小さな頭、長い裳裾(すそ)、
椅子(いす)は一つもないのです。
下界は秋の夜というに
上天界のあかるさよ。
ほんのりあかるい上天界
遐(とお)き昔の影祭(かげまつり)、
しずかなしずかな賑(にぎ)わしさ
上天界の夜の宴。
私は下界で見ていたが、
知らないあいだに退散した。
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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