中原中也・夜の詩コレクション16/むなしさ
むなしさ
臘祭(ろうさい)の夜の 巷(ちまた)に堕(お)ちて
心臓はも 条網(じょうもう)に絡(から)み
脂(あぶら)ぎる 胸乳(むなぢ)も露(あら)わ
よすがなき われは戯女(たわれめ)
せつなきに 泣きも得せずて
この日頃 闇(やみ)を孕(はら)めり
遐(とお)き空 線条(せんじょう)に鳴る
海峡岸 冬の暁風(ぎょうふう)
白薔薇(しろばら)の 造花の花弁(かべん)
凍(い)てつきて 心もあらず
明けき日の 乙女の集(つど)い
それらみな ふるのわが友
偏菱形(へんりょうけい)=聚接面(しゅうせつめん)そも
胡弓(こきゅう)の音(ね) つづきてきこゆ
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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