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2020年4月 2日 (木)

中原中也・夜の詩コレクション1/春の夜

春の夜

 

燻銀(いぶしぎん)なる窓枠の中になごやかに

一枝(ひとえだ)の花、桃色の花。

 

月光うけて失神し

庭の土面(つちも)は附黒子(つけぼくろ)。

 

ああこともなしこともなし

樹々(きぎ)よはにかみ立ちまわれ。

 

このすずろなる物の音(ね)に

希望はあらず、さてはまた、懺悔(ざんげ)もあらず。

 

山虔(やまつつま)しき木工(こだくみ)のみ、

夢の裡(うち)なる隊商(たいしょう)のその足竝(あしなみ)もほのみゆれ。

 

窓の中にはさわやかの、おぼろかの

砂の色せる絹衣(きぬごろも)。

かびろき胸のピアノ鳴り

祖先はあらず、親も消(け)ぬ。

 

埋(うず)みし犬の何処(いずく)にか、

蕃紅花色(さふらんいろ)に湧(わ)きいずる

春の夜や。

             

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)

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