中原中也・夜の詩コレクション21/冷たい夜
冷たい夜
冬の夜に
私の心が悲しんでいる
悲しんでいる、わけもなく……
心は錆(さ)びて、紫色をしている。
丈夫な扉の向うに、
古い日は放心している。
丘の上では
棉(わた)の実が罅裂(はじ)ける。
此処(ここ)では薪(たきぎ)が燻(くすぶ)っている、
その煙は、自分自らを
知ってでもいるようにのぼる。
誘われるでもなく
覓(もと)めるでもなく、
私の心が燻る……
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
« 中原中也・夜の詩コレクション20/幼獣の歌 | トップページ | 中原中也・夜の詩コレクション22/湖 上 »
「067中原中也・夜の歌コレクション」カテゴリの記事
- 中原中也・夜の詩コレクション118/秋の夜に、湯に浸り(2020.08.01)
- 中原中也・夜の詩コレクション117/雨が降るぞえ――病棟挽歌(2020.07.31)
- 中原中也・夜の詩コレクション116/道修山夜曲(2020.07.30)
- 中原中也・夜の詩コレクション115/夏の夜の博覧会はかなしからずや(2020.07.29)
- 中原中也・夜の詩コレクション114/暗い公園(2020.07.28)
コメント