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2020年4月27日 (月)

中原中也・夜の詩コレクション27/除夜の鐘

除夜の鐘

 

除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。

千万年も、古びた夜の空気を顫(ふる)わし、

除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。

 

それは寺院の森の霧(きら)った空……

そのあたりで鳴って、そしてそこから響いて来る。

それは寺院の森の霧った空……

 

その時子供は父母の膝下(ひざもと)で蕎麦(そば)を食うべ、

その時銀座はいっぱいの人出、浅草もいっぱいの人出、

その時子供は父母の膝下で蕎麦を食うべ。

 

その時銀座はいっぱいの人出、浅草もいっぱいの人出。

その時囚人は、どんな心持だろう、どんな心持だろう、

その時銀座はいっぱいの人出、浅草もいっぱいの人出。

 

除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。

千万年も、古びた夜の空気を顫わし、

除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)

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