中原中也・夜の詩コレクション13/生い立ちの歌
生い立ちの歌
Ⅰ
幼 年 時
私の上に降る雪は
真綿(まわた)のようでありました
少 年 時
私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のようでありました
十七〜十九
私の上に降る雪は
霰(あられ)のように散りました
二十〜二十二
私の上に降る雪は
雹(ひょう)であるかと思われた
二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪(ふぶき)とみえました
二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……
Ⅱ
私の上に降る雪は
花びらのように降ってきます
薪(たきぎ)の燃える音もして
凍(こお)るみ空の黝(くろ)む頃
私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸(さしの)べて降りました
私の上に降る雪は
熱い額(ひたい)に落ちもくる
涙のようでありました
私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生(ながいき)したいと祈りました
私の上に降る雪は
いと貞潔(ていけつ)でありました
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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