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2020年4月 4日 (土)

中原中也・夜の詩コレクション3/深夜の思い

深夜の思い

 

これは泡立つカルシウムの

乾きゆく

急速な――頑(がん)ぜない女の児の泣声(なきごえ)だ、

鞄屋(かばんや)の女房の夕(ゆうべ)の鼻汁だ。

 

林の黄昏は

擦(かす)れた母親。

虫の飛交(とびか)う梢(こずえ)のあたり、

舐子(おしゃぶり)のお道化(どけ)た踊り。

 

波うつ毛の猟犬見えなく、

猟師は猫背を向(むこ)うに運ぶ。

森を控えた草地が

  坂になる!

 

黒き浜辺にマルガレエテが歩み寄(よ)する

ヴェールを風に千々(ちぢ)にされながら。

彼女の肉(しし)は跳び込まねばならぬ、

厳(いか)しき神の父なる海に!

 

崖の上の彼女の上に

精霊が怪(あや)しげなる条(すじ)を描く。

彼女の思い出は悲しい書斎の取片附(とりかたづ)け

彼女は直(じ)きに死なねばならぬ。

             

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)

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