中原中也・夜の詩コレクション9/失せし希望
失せし希望
暗き空へと消え行きぬ
わが若き日を燃えし希望は。
夏の夜の星の如(ごと)くは今もなお
遐(とお)きみ空に見え隠る、今もなお。
暗き空へと消えゆきぬ
わが若き日の夢は希望は。
今はた此処(ここ)に打伏(うちふ)して
獣(けもの)の如くは、暗き思いす。
そが暗き思いいつの日
晴れんとの知るよしなくて、
溺れたる夜の海より
空の月、望むが如し。
その浪(なみ)はあまりに深く
その月はあまりに清く、
あわれわが若き日を燃えし希望の
今ははや暗き空へと消え行きぬ。
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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