中原中也・夜の詩コレクション17/夜更の雨――ヴェルレーヌの面影――
中原中也・夜の詩コレクション17/夜更の雨――ヴェルレーヌの面影――
夜更の雨
――ヴェルレーヌの面影――
雨は 今宵(こよい)も 昔 ながらに、
昔 ながらの 唄を うたってる。
だらだら だらだら しつこい 程だ。
と、見る ヴェル氏の あの図体(ずうたい)が、
倉庫の 間の 路次(ろじ)を ゆくのだ。
倉庫の 間にゃ 護謨合羽(かっぱ)の 反射(ひかり)だ。
それから 泥炭(でいたん)の しみたれた 巫戯(ふざ)けだ。
さてこの 路次を 抜けさえ したらば、
抜けさえ したらと ほのかな のぞみだ……
いやはや のぞみにゃ 相違も あるまい?
自動車 なんぞに 用事は ないぞ、
あかるい 外燈(ひ)なぞは なおの ことだ。
酒場の 軒燈(あかり)の 腐った 眼玉よ、
遐(とお)くの 方では 舎密(せいみ)も 鳴ってる。
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
夜更の雨
――ヴェルレーヌの面影――
雨は 今宵(こよい)も 昔 ながらに、
昔 ながらの 唄を うたってる。
だらだら だらだら しつこい 程だ。
と、見る ヴェル氏の あの図体(ずうたい)が、
倉庫の 間の 路次(ろじ)を ゆくのだ。
倉庫の 間にゃ 護謨合羽(かっぱ)の 反射(ひかり)だ。
それから 泥炭(でいたん)の しみたれた 巫戯(ふざ)けだ。
さてこの 路次を 抜けさえ したらば、
抜けさえ したらと ほのかな のぞみだ……
いやはや のぞみにゃ 相違も あるまい?
自動車 なんぞに 用事は ないぞ、
あかるい 外燈(ひ)なぞは なおの ことだ。
酒場の 軒燈(あかり)の 腐った 眼玉よ、
遐(とお)くの 方では 舎密(せいみ)も 鳴ってる。
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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