中原中也・夜の詩コレクション43/夢
夢
一夜(ひとよ) 鉄扉(かねど)の 隙(すき)より 見れば、
海は轟(とどろ)き、浪(なみ)は 躍(おど)り、
私の 髪毛(かみげ)の なびくが ままに、
炎は 揺れた、炎は 消えた。
私は その燭(ひ)の 消(き)ゆるが 直前(まえ)に
黒い 浪間に 小児と 母の、
白い 腕(かいな)の 踠(もが)けるを 見た。
その きえぎえの 声さえ 聞いた。
一夜 鉄扉の 隙より 見れば、
海は 轟き、浪は 躍り、
私の 髪毛の なびくが ままに、
炎は 揺れた、炎は 消えた。
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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