カテゴリー

2024年1月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

« 中原中也・夜の詩コレクション43/夢 | トップページ | 中原中也・夜の詩コレクション45/聞こえぬ悲鳴 »

2020年5月17日 (日)

中原中也・夜の詩コレクション44/或る夜の幻想(1・3)

或る夜の幻想(1・3)

 

1 彼女の部屋

 

彼女には

美しい洋服箪笥(ようふくだんす)があった

その箪笥は

かわたれどきの色をしていた

 

彼女には

書物や

其(そ)の他(ほか)色々のものもあった

が、どれもその箪笥(たんす)に比べては美しくもなかったので

彼女の部屋には箪笥だけがあった

 

  それで洋服箪笥の中は

  本でいっぱいだった

 

3 彼 女

 

野原の一隅(ひとすみ)には杉林があった。

なかの一本がわけても聳(そび)えていた。

 

或(あ)る日彼女はそれにのぼった。

下りて来るのは大変なことだった。

 

それでも彼女は、媚態(びたい)を棄てなかった。

一つ一つの挙動(きょどう)は、まことみごとなうねりであった。

 

  夢の中で、彼女の臍(おへそ)は、

  背中にあった。

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)

« 中原中也・夜の詩コレクション43/夢 | トップページ | 中原中也・夜の詩コレクション45/聞こえぬ悲鳴 »

067中原中也・夜の歌コレクション」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 中原中也・夜の詩コレクション43/夢 | トップページ | 中原中也・夜の詩コレクション45/聞こえぬ悲鳴 »