中原中也・夜の詩コレクション51/(何と物酷いのです)
(何と物酷いのです)
何と物酷(ものすご)いのです
此(こ)の夜の海は
――天才の眉毛(まゆげ)――
いくら原稿が売れなくとも
燈台番(とうだいばん)にはなり給(たま)うな
あの白ッ、黒い空の空――
卓の上がせめてもです
読書くらい障(さまた)げられても好いが
書くだけは許してください
実質ばかりの世の中は淋しかろうが
あまりにプロパガンダプロパガンダ……
だから御覧なさい
あんなに空は白黒(しろぐろ)くとも
あんなに海は黒くとも
そして――岩、岩、岩
だが中間が空虚です
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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