中原中也・夜の詩コレクション47/子守唄よ
子守唄よ
母親はひと晩じゅう、子守唄(こもりうた)をうたう
母親はひと晩じゅう、子守唄をうたう
然(しか)しその声は、どうなるのだろう?
たしかにその声は、海越えてゆくだろう?
暗い海を、船もいる夜の海を
そして、その声を聴届(ききとど)けるのは誰だろう?
それは誰か、いるにはいると思うけれど
しかしその声は、途中で消えはしないだろうか?
たとえ浪は荒くはなくともたとえ風はひどくはなくとも
その声は、途中で消えはしないだろうか?
母親はひと晩じゅう、子守唄をうたう
母親はひと晩じゅう、子守唄をうたう
淋しい人の世の中に、それを聴くのは誰だろう?
淋しい人の世の中に、それを聴くのは誰だろう?
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
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