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2020年5月 3日 (日)

中原中也・夜の詩コレクション33/月夜の浜辺

月夜の浜辺

 

月夜の晩に、ボタンが一つ

波打際(なみうちぎわ)に、落ちていた。

 

それを拾って、役立てようと

僕は思ったわけでもないが

なぜだかそれを捨てるに忍びず

僕はそれを、袂(たもと)に入れた。

 

月夜の晩に、ボタンが一つ

波打際に、落ちていた。

 

それを拾って、役立てようと

僕は思ったわけでもないが

   月に向ってそれは抛(ほう)れず

   浪に向ってそれは抛れず

僕はそれを、袂に入れた。

 

月夜の晩に、拾ったボタンは

指先に沁(し)み、心に沁みた。

 

月夜の晩に、拾ったボタンは

どうしてそれが、捨てられようか?

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)

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