中原中也・夜の詩コレクション63/頌 歌
頌 歌
出で発(た)たん!夏の夜は
霧(きり)と野と星とに向って。
出で発たん、夏の夜は
一人して、身も世も軽く!
この自由、おお!この自由!
心なき世のいさかいと
多忙なる思想を放ち、
身に沁(し)みるみ空の中に
悲しみと喜びをもて、
つつましく、かつはゆたけく、
歌はなん古きしらべを
霧と野と星とに伴(つ)れて、
歌はなん、夏の夜は
一人して、古きおもいを!
(一九二九・七・一三)
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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