中原中也・夜の詩コレクション79/酒場にて(初稿)
酒場にて(初稿)
今晩ああして元気に語り合っている人々も、
実は元気ではないのです。
諸君は僕を「ほがらか」でないという。
然(しか)し、そんな定規(じょうぎ)みたいな「ほがらか」は棄て給(たま)え。
ほんとのほがらかは、
悲しい時に悲しいだけ悲しんでいられることでこそあれ。
さて、諸君の或者(あるもの)は僕の書いた物を見ていう、
「あんな泣き面で書けるものかねえ?」
が、冗談じゃない、
僕は僕が書くように生きていたのだ。
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
« 中原中也・夜の詩コレクション78/(宵に寝て、秋の夜中に目が覚めて) | トップページ | 中原中也・夜の詩コレクション80/酒場にて(定稿) »
「067中原中也・夜の歌コレクション」カテゴリの記事
- 中原中也・夜の詩コレクション118/秋の夜に、湯に浸り(2020.08.01)
- 中原中也・夜の詩コレクション117/雨が降るぞえ――病棟挽歌(2020.07.31)
- 中原中也・夜の詩コレクション116/道修山夜曲(2020.07.30)
- 中原中也・夜の詩コレクション115/夏の夜の博覧会はかなしからずや(2020.07.29)
- 中原中也・夜の詩コレクション114/暗い公園(2020.07.28)
« 中原中也・夜の詩コレクション78/(宵に寝て、秋の夜中に目が覚めて) | トップページ | 中原中也・夜の詩コレクション80/酒場にて(定稿) »
コメント