中原中也・夜の詩コレクション72/(秋の夜に)
(秋の夜に)
秋の夜に、
僕は僕が破裂する夢を見て目が醒(さ)めた。
人類の背後には、はや暗雲が密集している
多くの人はまだそのことに気が付かぬ
気が付いた所で、格別別様のことが出来だすわけではないのだが、
気が付かれたら、諸君ももっと病的になられるであろう。
デカダン、サンボリスム、キュビスム、未来派、
表現派、ダダイスム、スュルレアリスム、共同製作……
世界は、呻(うめ)き、躊躇(ちゅうちょ)し、萎(しぼ)み、
牛肉のような色をしている。
然(しか)るに、今病的である者こそは、
現実を知っているように私には思える。
健全とははや出来たての銅鑼(どら)、
なんとも淋しい秋の夜です。
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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