中原中也・夜の詩コレクション60/秋の夜
秋の夜
夜霧(よぎり)が深く
冬が来るとみえる。
森が黒く
空を恨(うら)む。
外燈の下(もと)に来かかれば
なにか生活めいた思いをさせられ、
暗闇にさしかかれば、
死んだ娘達の歌声を聞く。
夜霧が深く
冬が来るとみえる。
森が黒く
空を恨む。
深い草叢(くさむら)に虫が鳴いて、
深い草叢を霧が包む。
近くの原が疲れて眠り、
遠くの竝木(なみき)が疑深い。
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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