中原中也・夜の詩コレクション66/カフェーにて
カフェーにて
醉客の、さわがしさのなか、
ギタアルのレコード鳴って、
今晩も、わたしはここで、
ちびちびと、飮み更(ふ)かします
人々は、挨拶交わし、
杯の、やりとりをして、
秋寄する、この宵をしも、
これはまあ、きらびやかなことです
わたくしは、しょんぼりとして、
自然よりよいものは、さらにもないと、
悟りすましてひえびえと
ギタアルきいて、身も世もあらぬ思いして
酒啜(すす)ります、その酒に、秋風沁(し)みて
それはもう 結構なさびしさでございました
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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