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2020年7月 8日 (水)

中原中也・夜の詩コレクション95/夏の記臆

夏の記臆

 

温泉町のほの暗い町を、

僕は歩いていた、ひどく俯(うつむ)いて。

三味線(しゃみせん)の音や、女達の声や、

走馬燈(まわりどうろ)が目に残っている。

 

其処(そこ)は直(す)ぐそばに海もあるので、

夏の賑(にぎわ)いは甚(はなは)だしいものだった。

銃器を掃除したボロギレの親しさを、

汚れた襟(えり)に吹く、風の印象を受けた。

 

闇の夜は、海辺に出て、重油のような思いをしていた。

太っちょの、船頭の女房は、かねぶんのような声をしていた。

最初の晩は町中歩いて、歯ブラッシを買って、

宿に帰った。――暗い電気の下で寝た。

 

                (一九三三・八・二一)

 

(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。※原文の「かねぶん」には傍点がつけられてあり、” “で示しました。

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