中原中也・夜の詩コレクション106/十二月(しわす)の幻想
十二月(しわす)の幻想
ウー……と、警笛が鳴ります、ウウウー……と、
皆さん、これは何かの前兆です、皆さん!
吃度(きっと)何かが起こります、夜の明け方に。
吃度何かが夜の明け方に、起こると僕は感じるのです
――いや、そんなことはあり得ない、決して。
そんなことはあり得ようわけがない。
それはもう、十分冷静に判断の付く所だ。
それはもう、実証的に云(い)ってそうなんだ……。
ところで天地の間には、
人目に付かぬ条件があって、
それを計上しない限りで、
諸君の意見は正しかろうと、
一夜彗星(すいせい)が現れるように
天変地異は起ります
そして恋人や、親や、兄弟から、
君は、離れてしまうのです、君は、離れてしまうのです
(一九三五・四・二三)
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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