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2020年7月20日 (月)

中原中也・夜の詩コレクション106/十二月(しわす)の幻想

十二月(しわす)の幻想

 

ウー……と、警笛が鳴ります、ウウウー……と、

皆さん、これは何かの前兆です、皆さん!

吃度(きっと)何かが起こります、夜の明け方に。

吃度何かが夜の明け方に、起こると僕は感じるのです

 

――いや、そんなことはあり得ない、決して。

そんなことはあり得ようわけがない。

それはもう、十分冷静に判断の付く所だ。

それはもう、実証的に云(い)ってそうなんだ……。

 

ところで天地の間には、

人目に付かぬ条件があって、

それを計上しない限りで、

諸君の意見は正しかろうと、

 

一夜彗星(すいせい)が現れるように

天変地異は起ります

そして恋人や、親や、兄弟から、

君は、離れてしまうのです、君は、離れてしまうのです

 

               (一九三五・四・二三)

 

(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)

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