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2020年7月 6日 (月)

中原中也・夜の詩コレクション94/虫の声

虫の声

 

夜が更(ふ)けて、

一つの虫の声がある。

 

それはたしかに庭で鳴いたのだが、

鳴き了(おわ)るや、それは彼処(かしこ)野原で鳴いたようにもおもわれる。

 

此処(ここ)と思い、彼処と思い、

あやしげな思いに抱かれていると、

 

此処、庭の中からにこにことして、幽霊は立ち現われる。

よくみれば、慈しみぶかい年増婦(としま)の幽霊。

 

一陣の風は窓に起り、

幽霊は去る。

 

虫が鳴くのは、

彼処の野でだ。

 

          (一九三三・八・九)

 

(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)

 

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