中原中也・夜の詩コレクション104/坊 や
坊 や
山に清水が流れるように
その陽の照った山の上の
硬い粘土の小さな溝を
山に清水が流れるように
何も解せぬ僕の赤子(ぼーや)は
今夜もこんなに寒い真夜中
硬い粘土の小さな溝を
流れる清水のように泣く
母親とては眠いので
目が覚めたとて構いはせぬ
赤子(ぼーや)は硬い粘土の溝を
流れる清水のように泣く
その陽の照った山の上の
硬い粘土の小さな溝を
さらさらさらと流れるように清水のように
寒い真夜中赤子(ぼーや)は泣くよ
(一九三五・一・九)
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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