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2020年7月28日 (火)

中原中也・夜の詩コレクション114/暗い公園

暗い公園

             

雨を含んだ暗い空の中に

大きいポプラは聳(そそ)り立ち、

その天頂(てっぺん)は殆(ほと)んど空に消え入っていた。

 

六月の宵(よい)、風暖く、

公園の中に人気(ひとけ)はなかった。

私はその日、なお少年であった。

 

ポプラは暗い空に聳り立ち、

その黒々と見える葉は風にハタハタと鳴っていた。

仰ぐにつけても、私の胸に、希望は鳴った。

 

今宵も私は故郷(ふるさと)の、その樹の下に立っている。

其(そ)の後十年、その樹にも私にも、

お話する程の変りはない。

 

けれど、ああ、何か、何か……変ったと思っている。

 

               (一九三六・一一・一七)

 

(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)

 

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