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2020年7月16日 (木)

中原中也・夜の詩コレクション102/星とピエロ

星とピエロ

 

何、あれはな、空に吊るした銀紙じゃよ             

こう、ボール紙を剪(き)って、それに銀紙を張る、

それを綱(あみ)か何かで、空に吊るし上げる、

するとそれが夜になって、空の奥であのように

光るのじゃ。分ったか、さもなけりゃ空にあんあものはないのじゃ

 

そりゃ学者共は、地球のほかにも地球があるなぞというが

そんなことはみんなウソじゃ、銀河系なぞというのもあれは

女共(おなごども)の帯に銀紙を擦(す)り付けたものに過ぎないのじゃ

ぞろぞろと、だらしもない、遠くの方じゃからええようなものの

じゃによって、俺(わし)なざあ、遠くの方はてんきりみんじゃて

 

               (一九三四・一二・一六)

 

見ればこそ腹も立つ、腹が立てば怒りとうなるわい

それを怒らいでジッと我慢しておれば、神秘だのとも云いたくなる

もともと神秘だのと云う連中(やつ)は、例の八ッ当りも出来ぬ弱虫じゃで

誰怒るすじもないとて、あんまり仕末(しまつ)がよすぎる程の輩(やから)どもが

あんなこと発明をしよったのじゃわい、分ったろう

 

分らなければまだ教えてくれる、空の星が銀紙じゃないというても

銀でないものが銀のように光りはせぬ、青光りがするってか

そりゃ青光りもするじゃろう、銀紙じゃから喃(のう)

向きによっては青光りすることもあるじゃ、いや遠いってか

遠いには正に遠いいが、そりゃ吊し上げる時綱を途方ものう長うしたからのことじゃ

 

(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)

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